外来種の蝶アカボシゴマダラの出現

2022年5月14日、今季のアカボシゴマダラを初見しました。しかし、アカボシゴマダラは昔から井の頭公園で見られていたチョウではありません。

私が初めてアカボシゴマダラの存在を確認したのは、2008年のことでした。その年、私はゴマダラチョウの観察に夢中になっていました。

そしてある日、無事に羽化したチョウを見て、翅の模様が何か変だなと思いました。

▲2008年5月25日に羽化したチョウ

▲ゴマダラチョウの翅

そして頭に浮かんだのが、少し前に見た新聞記事です。

▲2008年2月18日の朝日新聞の記事

この羽化したチョウは、ゴマダラチョウではなく、人為的に放蝶された中国産の外来種アカボシゴマダラだったのです

この後、知り合いから次々に連絡が来ました。「オオゴマダラのような白い大きなチョウが飛んでいた。嵐に吹き飛ばされてきたのだろうか。」「図鑑に載っていない白いチョウが死んでいたが、何ですか。」など。

アカボシゴマダラは日本では奄美大島のみに生息していて、絶滅危惧種です。それは図鑑にも載っていて、名前の通り翅に赤い星があるのが特徴だとあります。しかし、春型(春に羽化するもの)には、この赤い星がないことが多いのです。(2化目以降は、はっきり赤い星がでます。)図鑑には赤星がついているものしか載っていないので、調べてもわからなかったのです。

▲赤星のあるアカボシゴマダラ

また、アカボシゴマダラとゴマダラチョウは、幼虫や蛹もよく似ています。

背中の突起が3対か4対かで区別します。

▲左:ゴマダラチョウ 右:アカボシゴマダラ
▲左:ゴマダラチョウ 右:アカボシゴマダラ

新聞にもある通り、東京都では2007年に成虫が侵入したらしいので、それが産んだ新生個体が2008年に一斉に羽化し、人々を驚かせたわけでしょう。この年の初夏の井の頭公園は、この大きな白いチョウがたくさんひらひら飛んで人々の眼をひき、驚かせました。

以来、井の頭公園では現在まで、アカボシゴマダラは毎年必ず見られる優勢種となりました。

アカボシゴマダラは今、「特定外来生物」に指定されていますが、一度放蝶して広がってしまったものを、元に戻すことはとても難しいです。

アカボシゴマダラは、エノキの葉を食草として育ちますが、エノキには在来のゴマダラチョウ(生活史がアカボシゴマダラとほとんど同じ)のほか、テングチョウ・ヒオドシチョウなども産卵します。アカボシゴマダラの侵入はこれらの蝶の生息環境を脅かすのでしょうか。生態系全体にどんな影響を与えるのでしょうか。いろいろな推測がされていますが、今はまだはっきりとは確認されていません。

これからも注意深く観察を続けていくしかないと思います。

※このチョウ(卵・幼虫・成虫とも)を持ち帰って他所に放蝶してはいけないことになっています。

文責:takaku

 

ハクビシンの声

最近、小鳥の森周辺でハクビシンの目撃例が増えていて、子連れも目撃されています。それと呼応して録音調査のほうにもハクビシンの鳴き声が頻繁に録音されるようになりました。

20220517 小鳥の森

この声は奥多摩のほうの録音調査をやったときも時々録音されて、長らく「謎の声」でした。近い距離で鳴いていると「サルが2頭で喧嘩してる?」というような印象で、遠い距離で鳴いていると「もしかしてフクロウ雌?あるいはフクロウ雌幼鳥?」というように想像のみでしたが、YouTubeにあるハクビシン動画を見つけて、それで謎が解決しました。

ハクビシンは鳥の巣も襲うので、増えないで欲しいなと思います。

suzuki

キビタキの「ピッピーロ ピッピーロ」部分のバリエーションについて

GW前後は夏鳥が井の頭公園を通過していく時期で、井の頭バードウォッチャーにとって、まさにゴールデンな期間です。キビタキも井の頭を通過していく夏鳥の代表選手です。

小さい体で海を越え、東南アジアから日本への長距離移動して、到着するやいなや大声量でさえずる姿に、生命のすごさを感じます。

キビタキのさえずりの基本は「フィリン!ピッピーロ ピッピーロ ピッピーロ」ですが、この「ピッピーロ」の部分は非常にバリエーション豊富で、ときに『コジュケイの真似をしている』などと言われることがあります。

「コジュケイの真似」に関しては、私は懐疑的で、なぜならコジュケイは日本と中国大陸南部にしか生息していなくて、キビタキの越冬地であるフィリピンなど東南アジアにはいないのです。半年ぶりに日本に帰ってきて、コジュケイの鳴き方を覚えていて、いきなり真似をするというのは考えにくいのです。そして、日本の北海道もコジュケイは生息していませんが、北海道のキビタキもコジュケイ似の鳴き方をするという報告もあります。

「ピッピーロ」部分のバリエーションは豊富なので、そのうちの一つが、たまたまコジュケイに似ているだけではないか?と私は想像しています。

今年の5月5日に、大変バリエーション豊富なキビタキのさえずりが録音できました。(3分もある長い録音ですが、ぜひ全部聞いて欲しいです)

上記録音のスペクトログラム表示を見ただけでも、バリエーションの豊富さがわかるとおもいます。

これの5回目のさえずりが「コジュケイの真似」と言われるパターンではないか?と思います。

6回目と7回目のさえずりは、すごいです。こんなの初めて聞きました。

キビタキが他の鳥の真似をしているかどうか?は別として『バリエーションが豊富な雄ほど雌にモテる』ということは他の鳥でよく言われていることです。モズなどは観察と実験でモテることが確かめられています。

キビタキの「ピッピーロ」部分のバリエーションが豊富なのは、繁殖期前期だけ、つまり婚活期だけ、ということは無いかな?と思いはじめまして、これは課題としたいと思っています。

繁殖地での録音データもたくさんあるので、飛来期と繁殖期で違いがあるのか?調べてみたいと思っています。

キビタキもピッピーロバリエーションが豊富なほど雌にモテるのだとしたら、この録音の雄は相当モテ男だろうと思います。

suzuki