2018年5月10日のこと、野鳥カメラマンたちが小鳥の森でトンボの写真を撮っているのに遭遇しました。何だろうと見ると、ヤブヤンマのようです。

2頭いて、どちらもヤゴの抜け殻の傍にぶら下がっています。すでに腹も伸び翅もきれいに広がっていますが、ここで羽化した個体に違いありません。あたりを探してみると別の場所にヤゴの抜け殻があと2つ見つかったので、少し前から発生が始まっていたのでしょう。


▲次々と羽化するヤブヤンマ
その後気になって時々チェックしてみると、驚いたことにヤブヤンマの羽化は次々と続き、7月8日までの間に私が確認しただけで20頭以上が羽化していました。羽化したもの以外にも、フェンスや草などにヤゴの抜け殻がたくさんついています。全部を総合すると、この池から羽化したヤブヤンマは少なく見積もっても50頭はいたようです。

羽化したてのヤブヤンマは未成熟で、成熟するまで別の場所へ移動して餌などを捕っていると思われます。近くの広場で大きめのヤンマが飛び回っているのを目にしたことがあるので、それがここで羽化したヤブヤンマだったのかもしれません。
6月も下旬ごろになると、池を周遊するヤブヤンマの姿が見えるようになりました。成熟したオスがメスを探しに来たり、メスが産卵しに来たりしているようでした。


盛夏の時期のヤブヤンマは、日中猛暑を避けて暗い樹林の中で休憩し、涼しくなった夕方、黄昏飛翔をします。成熟したきれいなオスが休んでいる姿も見られました。

ヤブヤンマはそれほど珍しいトンボというわけではありませんが、この池からの発生は初確認でした。また1か所からこれほど大量に発生したということにも驚かされました。
こんな小さな池に50匹ものヤブヤンマが羽化してきたのはなぜなのでしょうか。
この池は、数年前に野鳥の水場として新しく作られた小さな人工的な池です。初めは生き物など何もいなかったのですが、そのうち春になるとユスリカの仲間が大発生したり、カゲロウやトビケラの仲間がたくさん羽化してくるようになりました。

たぶん、そこへヤブヤンマのパイオニア・メスがやってきて産卵したのでしょう。餌のユスリカやカゲロウの幼虫はたくさんいて、競争相手も天敵もいない状態だったので、産み付けられた卵の生存率が非常に高かったのだろうと推測されます。また、周りの環境もヤブヤンマの好みに合っていたに違いありません。
この大発生は、続くのでしょうか。その後、2019年~2021年と観察を続けていくと、予想はしていましたが、発生数は年々半減していきました。今年はまだ見ていません。(見られるといいのですが。)
発生数が減少していった要因は何でしょうか。一つは天敵です。冬の間、カメラマンが、キセキレイなどがヤゴを捕食している写真を撮っていました。カルガモも居つくようになり、カメ(アカミミガメを捨てていった人もいたようで、これが居ついたらヤゴたちは全滅するかもしれません。)も見かけました。
もう一つは競争相手です。この池にはその後、オオアオイトトンボ・リスアカネ・マユタテアカネ・オオシオカラトンボ、そしてクロスジギンヤンマも現れ、産卵するようになりました。それらのトンボのヤゴたちが餌をめぐって競合するようにもなっているはずです。
環境に変化が起きると、生物相がどのように変わっていくのかがよくわかるケースでした。
文責:takaku






