●クロコノマチョウ
クロコノマチョウはツマグロヒョウモンやナガサキアゲハと比べると、地味なチョウ(タテハチョウ科)です。花にも来ないし、落ち葉の上などに止まっていると、見事なカモフラージュとなって、目に入りません。成虫で越冬するので、冬に落ち葉の上を歩いていると、いきなり飛び出したりして気づくことが多いです。

このチョウも、例えば2006年発行の図鑑によれば、分布は「本州(千葉県以西の沿岸地域)・四国・九州」とあります。2012年発行の図鑑では、「分布を拡大しており、かつては東京近郊では見られなかったが、現在では定着して発生している。」とあります。やはり温暖化によって北上してきたチョウと言えるでしょう。
私は昭和記念公園や近隣の野川公園などで見ていましたが、井の頭公園付近では2009年に幼虫(食草はススキやジュズなど)、2010年成虫を初めて見ました。目立たないチョウなので、気が付かなかっただけで、もっと以前からいた可能性もあるでしょう。現在はほぼ毎年見られています。

幼虫はススキやジュズなどにつくと言われていましたが、井の頭公園での発生元はなかなか突き止められませんでした。その後、なんとアシボソでも繁殖していることがわかりました。


▲井の頭公園内(百年森)のアシボソで発見された幼虫と蛹


▲樹液や果実で吸蜜するクロコノマチョウ
偶然こんな場面が見られるとうれしいものです。
●ムラサキツバメ
ムラサキツバメはシジミチョウ科のチョウです。このチョウも、チョウ愛好家以外には、あまり知られていないチョウです。小さいし、翅を閉じていると目立たない茶色だし、花から花へひらひらと飛ぶチョウではないからでしょう。このチョウは、食草のマテバシイでメスを待つか、冬季に越冬場所で探さないとなかなか目にできません。



▲翅を開くときれいな青紫色が見えるので、チョウ愛好家に人気
2006年発行の図鑑によれば、分布は「本州(近畿地方以西)・四国・九州」とあります。また、2012年発行の図鑑では、「近年分布を拡大している。2000年代には東京近郊でも各地で見られるようになり、現在は、都市部の公園でも普通に見られる。」とありました。
マテバシイは、ウィキペディアによれば「日本の本州の房総半島南端、紀伊半島、四国、九州から南西諸島に分布し、温暖な沿岸地に自生している。人手によって、寺社の境内や公園などにも植えられている。植栽可能地は、日本では東北地方南部から沖縄の範囲とされ、各地の暖地に植栽されている。マテバシイは葉が大きく密につくため、列植すると遮音性が高まり防音効果が期待され、大気汚染にも強いことから、往来の多い道路沿いに最適な樹種であると言われている。」とあります。
ムラサキツバメはこうした人間の行為に載って北上してきたのではないでしょうか。
私が井の頭公園で観察を始めたころ、ちょうど「ムラサキツバメがいる」ということが話題になっていたころでした。特に食樹のマテバシイが集中的に生えていた善福寺公園では、幼虫もよく観察できました。井の頭公園内にもマテバシイは植えられているので、探した見たところ、発見できました。

また、ムラサキツバメは常緑樹の葉の陰で集団越冬するのが特徴で、井の頭公園でも観察できます。でも、春まで同じところで無事越冬するのはなかなか難しいようです。



▲越冬場所近くの花(ビワ・ツバキ)で吸蜜するムラサキツバメ
注意して見ているとこんな場面が見つかることがあります。
クロコノマチョウやムラサキツバメ以外にも、調べてみるとムラサキシジミ・ウラギンシジミ・モンキアゲハ・アオスジアゲハなど、以前は関東地方では見られなかったチョウが近年北上してきたことがわかります。
これらのチョウは、地球温暖化が原因で北上してきたと単純には言えないかもしれません。チョウはその幼虫が食べる草木(食草)が決まっているので、食草がないところでは生息できないし、また逆に食草があれば、どんどん生息域を広げていく可能性があるからです。南方系の樹を植林したり、園芸種を広めるなどの人の営みが影響している場合もあるようです。
こうした私たち人間の営みが生態系を変えていってしまう場合があることは、知っておかなければならない問題です。
文責:takaku






